昨季は先発なし→開幕4戦連続先発 東レ滋賀・川副華笑のトスに見る、2勝2敗の手応え
東レアローズ滋賀の攻撃を組み立てる川副華笑が、今季は開幕から4試合連続で先発している。
昨季、チームは6勝38敗の13位。今季はPFU、KUROBEとのアウェイ2連戦で、それぞれ1勝ずつを挙げ、2勝2敗でスタートした。そのコートで、これまでとは異なる役割を担っているのが川副だ。
昨季は先発なし。一昨季も、レギュラーシーズンで第1セットのスタートを任されたのは3試合だった。それが今季は、開幕4試合すべてで先発。すでに一昨季の先発試合数を超えた。
サイドの得点源を生かし、ミドルにもボールを配る。勝った試合を詳しく見ると、川副は同じ選手に同じ割合で上げ続けているわけではない。アタッカーとの組み合わせ、試合ごとの配分、そしてサーブと守備。その数字から、先発セッターとして歩み始めた川副の良さを探りたい。
「途中から入る選手」から、試合の始まりを任される選手へ
川副は長崎出身。九州文化学園高、福岡大を経て東レに加入した、身長166センチのセッターだ。
昨季も34試合、81セットに出場していた。出場機会そのものがなかったわけではない。ただ、レギュラーシーズンでは第1セットの先発はなく、途中出場でチームに関わる立場だった。
今季は、その役割が変わった。
開幕4試合すべてで第1セットに先発。出場は15セットで、そのうち14セットではセットのスタートからコートに立っている。
途中から流れを変える役割に加え、試合の入りからアタッカーと呼吸を合わせ、攻撃を組み立てる役割を任されている。
勝利した10月18日のPFU戦は全4セット、24日のKUROBE戦は全5セットで先発。二つの白星を、試合開始から支えた。
昨季よりミドルの攻撃が増えた。チームの配分に見える変化
昨季と今季で、東レ滋賀の攻撃はどう変わっているのか。
まず、公式記録のアタック打数から、チーム全体の攻撃配分を比較したい。昨季は44試合、今季は開幕4試合の数字になる。
【昨季/今季・開幕4試合】 チームのアタック決定率:32.7%/36.9% ミドルのアタック打数が占める割合:19.7%/23.7%
ミドルのアタックが占める割合は、19.7%から23.7%へ。4.0ポイント増えている。
昨季はチーム全体のアタック6,628本のうち、ミドルの選手が1,305本。今季は515本のうち122本を打っている。昨季は約5本に1本だったミドルの攻撃が、今季は約4本に1本になった。
ここでいう配分は、セッター以外が上げたボールも含むチーム全体の攻撃打数の割合だ。川副一人のトス配分を示すものではないが、今季の東レ滋賀が、ミドルの攻撃も使いながら戦っていることが分かる。
一方、サイドの得点源も明確になっている。
今季のアタック打数は、シュラゴウスカが133本、オボッサが132本、渡邉かやが96本。この3人がサイドの攻撃を担い、その中にメリューシキナらのミドルの攻撃を組み込んでいる。
選手の顔ぶれも、比較する試合数も異なるため、配分の変化をすべてセッター交代の効果とは言い切れない。それでも、チームのアタック決定率が昨季の32.7%から36.9%へ上がっていることは、今季の攻撃を見ていくうえで一つの手応えになる。
川副のトスは、二人の得点源とミドルをどう使っているか
では、川副自身の配分はどうだろう。
今季4試合で、川副のトスからアタックにつながった316本を、打った選手別に集計すると、主な配分先は次のようになる。
【アタッカー:本数/配分割合】 シュラゴウスカ:87本/27.5% オボッサ:80本/25.3% メリューシキナ:54本/17.1% 渡邉かや:49本/15.5% 樫村まどか:19本/6.0%
シュラゴウスカとオボッサが、それぞれ約4分の1。二人を大きな得点源にしながら、メリューシキナにも17.1%を配っている。
他のミドルの選手も合わせると、川副からミドルへの攻撃は90本。全体の28.5%だった。
サイドの二人だけで攻撃を完結させず、ミドルも含めて得点を狙う。その配分が数字に表れている。
特にメリューシキナとの組み合わせは、54本から23得点、決定率42.6%。川副のトスから生まれた攻撃の中で、一定の本数と得点を残している。
ミドルを使うことが、相手ブロックをどれだけ動かしたかまでは、この数字だけでは分からない。ただ、相手が警戒すべき攻撃先を複数持っていることは、東レ滋賀の攻撃を考えるうえで大切な要素だ。
初勝利のPFU戦は、オボッサを軸に5人で得点
今季初勝利を挙げた10月18日のPFU戦。東レ滋賀は第1セットを落とした後、3セットを連取し、3―1で勝った。
この試合で、川副のトスからアタックにつながったのは98本。そのうち45本が得点になり、決定率は45.9%だった。
最も多く配ったのはオボッサへの28本。16得点につながり、決定率57.1%を記録した。
続いて渡邉に23本、シュラゴウスカに21本。ミドルの樫村に14本、メリューシキナに11本を配った。
川副のトスからのアタック得点は、オボッサ16、渡邉10、シュラゴウスカ9、メリューシキナ6、樫村4。5人がそれぞれ得点を挙げた。
オボッサを最も多く使いながら、他のアタッカーにも攻撃の機会をつくる。初勝利は、複数の選手の決定力を引き出した試合だった。
オボッサは、川副のトスから第3セットに5得点、第4セットにも5得点。セットカウント1―1から勝利へ向かった後半で、二人の組み合わせが得点を重ねた。
第3セットの23―20から24点目を取り、24―21からセットを決めたのも、川副からオボッサへの攻撃だった。
競り合いを終わらせる場面で、同じ組み合わせが続けて決める。配分するだけでなく、得点を託す攻撃を持てたことも、この勝利の中身だ。
KUROBE戦では配分を変え、シュラゴウスカとメリューシキナへ
10月24日のKUROBE戦は、3―2のフルセット勝利だった。
この試合では、川副の配分の中心が変わっている。
最多はシュラゴウスカへの32本、配分割合29.4%。オボッサが30本で27.5%、メリューシキナが26本で23.9%と続いた。
PFU戦では渡邉への配分が23.5%だったが、この試合は11.0%。一方、メリューシキナは11.2%から23.9%へ増えた。
同じ比率で上げ続けたのではなく、この試合ではシュラゴウスカ、オボッサ、メリューシキナの三人が、川副のトスからの攻撃を多く担った。
その結果、シュラゴウスカは32本から17得点、決定率53.1%。オボッサは30本から15得点、50.0%。メリューシキナは26本から11得点を挙げた。
試合全体では、シュラゴウスカが31得点、オボッサが22得点、メリューシキナが14得点。川副に加え、途中出場した花岡千聡らのトスも得点につながり、チームはアタック70得点を記録した。
先発セッターとして多くの攻撃を組み立て、交代した選手も含めて攻撃をつなぐ。その中で川副は、三人の得点源にボールを届け続けた。
最優秀新人賞の花岡もいる中で、先発を任された川副
昨季の最優秀新人賞を受賞した花岡千聡もいる中で、今季は川副が開幕4試合連続で先発を任されている。
昨季は途中出場でチームを支えた川副が、今季は試合の始まりから攻撃を組み立てる。一方、花岡も途中出場から持ち味を発揮し、KUROBE戦の最終セットでは、最後の2点をシュラゴウスカとの組み合わせで奪った。
その第5セットには、川副の攻撃の組み立ても凝縮されている。
最初の1点は、川副からメリューシキナへのアタック。1―2から2―2に戻したのも、同じ組み合わせだった。
最終セットの入りから、ミドルで2得点。短いセットでも、攻撃の選択肢を狭めなかった。
その後、2―5からはシュラゴウスカ。3―6、4―8ではオボッサが決めた。
6―9からはシュラゴウスカ、7―10からはオボッサ、8―10からは再びシュラゴウスカ。点差を追う場面で、二人のサイドアタッカーを使って得点を重ねた。
川副のトスから、このセットはオボッサが4得点、シュラゴウスカが3得点、メリューシキナが2得点。三人で9本を決めている。
11―11から12点目を取ったのも、川副からオボッサへの攻撃だった。
最後の14点目と15点目は、花岡のトスをシュラゴウスカが決めた。川副が組み立てた攻撃を、交代したセッターも引き継ぎ、チームでフルセットを取り切った。
川副が先発でつくる攻撃と、花岡が途中から加える力。二人のセッターが、それぞれの役割で東レ滋賀の2勝2敗のスタートを支えている。
4試合で30ディグ、サーブ効果率14.4%。トス以外にもある貢献
川副の良さは、トス配分だけではない。
今季4試合でディグ30本。PFU戦の勝利では7本、KUROBE戦の勝利では12本を記録した。
セッターが拾えば、その次のトスは他の選手が上げることになる。それでも、まずボールを落とさず、味方が攻撃できるところまでつなぐ。その仕事も川副は担っている。
サーブは4試合で40本を打ち、サービスエース3本。サーブ効果率は14.4%だった。
川副のサーブ時にチームが挙げた得点は、40回中16回。ブレイク率40.0%を記録している。
勝ったPFU戦では12回中6回、KUROBE戦では17回中8回。二つの勝利では、自らのサーブからも得点につながる時間をつくった。
トスでアタッカーを生かし、守備でラリーをつなぎ、サーブで得点のきっかけをつくる。先発セッターとしての貢献は、ボールを上げた本数だけでは測れない。
2勝2敗の中に見える、川副と東レ滋賀のこれから
昨季の先発なしから、今季は開幕4試合連続先発へ。
川副は、試合の始まりから攻撃を任される立場になった。その4試合で、東レ滋賀は2勝。勝った二つの試合では、川副のトスからの攻撃が45得点、47得点を生んだ。
PFU戦はオボッサを軸に、渡邉、シュラゴウスカ、ミドルへ。KUROBE戦はシュラゴウスカとオボッサに、メリューシキナをより多く組み合わせた。
昨季よりミドルの攻撃割合が増えたチームの中で、川副自身も28.5%をミドルに配っている。サイドの得点源を使いながら、他の攻撃も得点につなげようとする姿が、数字に表れている。
まだ開幕4試合。それでも、先発を任された川副が、アタッカーとの組み合わせを実戦で重ね、その中から二つの白星をつかんだ意味は大きい。
東レアローズ滋賀の2勝2敗のスタートには、川副華笑が届けたトスと、そのボールを決めた選手たちの手応えがある。